決戦はVALENTINE

                                                                         (side 英二)





「どうしてあんな所で身を乗り出してたんだ?」


どうしてって・・・それは大石が教室にいないと思ったら、あんなトコでコソコソチョコを貰ったりしてるから・・・

それでついカァーとなって・・・

でもそんな事先生にいえないよな・・・



「えっと・・・あの・・・スミマセン・・・」

「まぁ反省してるなら構わないが、これから気をつけるんだぞ」

「はぁ〜い。本当にすみませんでしたー」



俺は深々と頭を下げて、職員室から出た。

その時丁度昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。


あ〜〜〜ぁ・・・昼休み終わっちゃった・・・

ホントタイミング悪いよ!!

今朝からすれ違いばかりの大石の奴をやっと見つけた!って思ったら、 あんなトコでチョコ貰ってるし・・・

それに腹を立てて、3階の窓から身を乗り出して、大石に文句を言ってたら、ちょうどそこへ先生が通りがかって、俺は職員室に連れてこられた上にお説教・・・

で昼休みは終わっちゃうし・・・

あぁホント嫌んなっちゃうなぁ・・・

俺が悪いんじゃないじゃん。

俺に会わずにコソコソしてる大石が悪いんじゃんか。

先生には謝ったけど・・・大石には絶対謝んないかんな!!



・・・・・・・・・


でも・・・最後に見た大石・・・何か焦った顔してたよな・・・

女の子に何か言って、走り出してた・・・

アレってひょっとして・・・俺んトコに向かったのかな・・・?

そうだよな・・・大石の事だから、身を乗り出してる俺を見てほっておける筈ないんだ。

チョコを受け取った所を見られたのだって、絶対気にしてる。

今頃どうやって謝ろうか?とか考えてんだろうな・・・

チェッ・・・仕方ない。

大石の奴がごめんって謝ってきたら、許してやっか・・・

今日はバレンタインだし・・・

不二も大目に見てあげたら?って言ってたしな・・・

それに・・・実は俺も何個かチョコは貰ってるしさ

もちろん告白付きのは、全部断ったけど・・・

お互い様といえば、お互い様だしな・・・

うん。部活の時にちゃんと話して、帰りにコンテナに行こう。

そんでもって、俺の作った甘〜〜いチョコケーキ食わせてやるか。
















「なぁ不二・・・大石なんで部活に出ないんだよ?」

「さぁ。何度同じ事を聞かれても僕も困るんだけど・・・昼休みに手塚に会った時に聞いたのは

部活が始まる前に竜崎先生と大石と三人で今度の練習試合のオーダーを決めるから、少し遅れるってだけで、それ以上の事は聞いてないし」


チェッ・・・なんだよ・・・

午後練が始まってようやく大石に会えるって思ったのにさ・・・コレだよ。

せっかく許してやろうって思ったのに、なんでこんな時に部活まで遅れるんだ?

大体少し遅れるってなんだよ!

もう殆んど練習終わっちゃてるじゃん!



部活に出れば、必ず会えるって思っていた大石にまだ会えない・・・

イライラがどんどん大きく膨れ上がって、傍にいる不二に八つ当たり・・・

自分でも八つ当たりしてる事はわかってんだけど、もうどうにも収まらない・・・

イライラ・・・ムカムカ・・・・


そんな時ようやく大石と手塚がテニスコートの片隅に現れた。


大石っ!!!!


大石が来た。たったそれだけなのに、急に顔がほころぶ・・・


こんな事で喜んでどうすんだよ!

今までイライラ・・・ムカムカしてたんだろ?


って思いながらも俺はその場にいてもたってもいられなくて、大石めがけて走り出した。



「大石っ〜〜〜!!!」


大石も俺に気付いて手を上げている。



「英二!」

「大石っ・・俺・・」



ハァハァと息を整え、大石に話しかけようとした時に、手塚に言葉を遮られた。



「菊丸」

「何だよ?」



俺は大石と話がしたいのに、何だよホント。



「今日の朝練を休んだ罰として、今からグランド20周」

「ハァ?」

「聞こえなかったか?」

「イヤ・・・聞こえたけど」

「じゃあ。そういう事だ」

「そんな・・・」



俺は急に告げられた罰走に、大石の顔を見た。

大石は苦笑いをしながら、俺の横に立つ。



「仕方ないよ英二。休んだのは事実だから」



何だよ!なんで遅れたと思ってるんだよ!!

お前の為に色々してて遅れたんじゃんか!!

それなのに・・・お前がそんな事言うなよ!



「もういいわかった!!走ればいいんだろ?走れば!!」



そう言って大石の顔を睨みつけて、俺は走り出した。



「ちゃんと走り終わるの待ってるから!!」



大石の声が背中越しに聞こえたけど、振り向かずそのまま無視してコートから出て行く


チェッ!!

大石のバーカ!バーカ!バーカ!!

やっと会えたのに、ろくに人の話聞かないで、手塚の肩持っちゃってさ!!

何だよアイツ!! 許してやろうと思ったけど、もう許してやんないからな!!

それにチョコケーキだってもう大石になんかやるもんか!!

アイツの事なんて、もう知らない!!


俺はグラウンドを走りながら、考え付く大石の悪口を一杯心の中で叫んでいた。
















ハァハァハァ・・・・

20周走り終わってコートに戻って来ると、練習は既に終わっていて、部員の姿もない。


『ちゃんと走り終わるの待ってるから!!』


って大石言ってたよな・・・あのヤローーーーーーーー!!

絶対!絶対!許してやんない!!


ドス!ドス!ドス!


と地面を踏みしめながら、部室に向かって歩いていく。

途中で何人かの後輩部員とすれ違って、挨拶されたけど、笑顔で答える事なんて出来ない。

俺は怒りのまま乱暴に、部室の戸を開けた。

その時に目に飛び込んできたのは、向かい合う手塚と大石で



「コレなんだが・・・」



と言いながら、手塚が大石にチョコらしき物を手渡そうとしているとこだった。

その瞬間俺の中の、何かがキレた。



「何やってんだよ手塚!!」



そう言いながら、走りよって大石と手塚の間に割り込んだ。



「英二っ!」



俺を制止するように、大石が俺を呼んだけど、俺はお構いなしに、思いっきりチョコを握っている手塚の手を払いのけた。



「俺の男に手を出すな!!!!」



部室中に響く大きな声で叫んで、仁王立ちする。

チョコは手塚の手から落ちて、シュルルルル・・と床を滑っていった。



「英二っ!何言ってんだよ!」



大石が俺の肩に手を置いて、止めに入ったけど、それがまた俺の心を逆撫でする。



「何だよ!大石は俺の大石じゃないのかよ?」



振り向いて、ギリリッて大石の奴を睨んだつもりだったけど、目に力が入らない・・・

それどころか視界がかすんできた。



「英二・・・」

「それに・・大体なんで今日朝練に遅れたと思ってんだよ・・・俺の話も聞かないで・・・大石なんか・・・大石なんか・・・」



嫌い・・・なんて嘘でも言えない・・・そんな自分が悔しい・・・


俯いていると、涙がポタポタ床に落ちる。


俺・・・何やってんだろ?


朝から大石の事でやきもちばかり妬いて・・・

俺以外の奴からチョコ受け取ってほしくなくて・・・

見境なく叫んで・・・

手塚の手払いのけて・・・


だけど冷静に考えれば、手塚がみんなの前で大石にチョコなんて渡すわけが無いよな。

そうなんだ・・・部室に入った時はカァーとして大石と手塚しか見えなかったけど、 今ココに、不二もタカさんも乾も桃も海堂も・・・レギュラー全員いる。

みんな黙って俺を見てる。気配でそれがわかる。

だから顔も上げらんない。

手塚怒ってるかな?手を払いのけた時、眉がピクッて上がってた。



大石は・・・俺が『俺の大石じゃないのかよ?』って聞いてから、何も言わない。

嫉妬深くて・・・呆れたのかな?

それとも、みんなの前で俺達の事を言ってしまった事・・・怒ったのかな?




何か言ってよ・・・大石。





英二爆発☆とうとうみんなの前で言っちゃいました☆言わなくてもみんな気付いているとは思うんですが・・・晴れて公認です☆


ここまで読んでくれてありがとう!!もう少しで終わりです。(残り1ページ)